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電波障害の調査に便利な測定器

RFカーレントプローブの作り方

An RF Current Probe for Amateur Use QST Feb. 1999

Takashi Hioki JF1GUQ/KA8J

原典はARRL発行のQST1999年2月号34ページのN5SV Steve L.Sparks氏の「An RF Current Probe for Amateur Use」によります。2分割のノイズフィルター(フェライトコア)をワンターンループのRFクランプに利用して、ケーブルに混入するRF成分を測定するのが目的です。
 

フェライトコアの持つ「磁束が漏れにくい特性」を生かして外部の影響を受けないピュアなデータを得ることができます。記事では1.8~30MHzの周波数帯において0.2mA(10mW)の感度があると述べられています。

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C1:0.1μF セラミックコンデンサ(積層セラミックでも可)耐圧は16Vくらいで良い。 D1~D4:1N34ゲルマニウムダイオード(シリコンダイオードは使えない) L1:シングルターンのピックアップループ。トロイダルコアの中を通す。 M1:1mA感度のメーター。ラジケータやさらに高感度のタイプでも良い。 R1:パネルに取り付けた100Ωのボリウム。500Ωくらいまで使用できます。多回転タイプのポテンショメータがあればさらに使いやすいが、普通のボリウムでも十分に使える。

トランシーバーの電源ラインに漏れる高周波や、電話線に混入するRF電流を検出することで、各種電波障害の対策に利用できます。検出部を平衡回路に組んだ電界強度計をローテータのケーブルや電話ライン、電灯線、オーディオアンプのスピーカーコードに近づけ送信すると、大きな高周波エネルギーが検出できます。
 

平衡回路は簡単なループアンテナであったり、ダイポールで代用できますが、そのような検出部ではアンテナの直下では直接電波を検波しているのか、ケーブルに重畳されている高周波エネルギーなのか区別することが困難です。本機の特長は検出部にフェライトコアでRFクランプを構成して、手軽に閉磁回路を作り出すことができ、不要な高周波エネルギーを手軽に見ることができます。
 

アマチュアの用途では絶対値の混入強度を知る必要はあまりなく、フェライトコアやコモンモードフィルターを取り付ける前と取り付けた後の数値の違いが定量的に測定できれば、対策の効果を見ることができます。先に述べた電界強度計では測定ポイントを特定したり、非測定物との結合具合を一定に保つことが困難です。その点、本機は測定ポイントを一定に保ち、結合度も変えることなくデータが取れます。

RFカーレントプローブの内部

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完成したRFカーレントプローブの外見と検出部のようす

市販の2分割ノイズフィルタをRFプローブに活用したユニークな測定器

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ゲルマニウムダイオードをブリッジに組んだ検波回路。両端の黄色い配線がL1の検出部となっている。内部は部品点数が少ないのであっさりしている。メーターの取り付け穴の加工が一番手間の掛かる作業かも知れない

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基本的にはジャンクボックスで探すことのできる部品を集めて作れるのが本機の特長。ダイオードにゲルマニウムを使うこと以外はかなりラフに考えて手軽に作ることをお勧めする。ハンダごてはIC工作用の20W前後を使用する

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RFカーレントプローブの使い方。測定したい配線を2分割のフェライトコアで挟みます。5D‐2Vまでの太さのケーブルに対応している。同軸ケーブルの外皮に流れるコモンモードノイズや電源ケーブルに漏れる高周波エネルギーを計ることができる

部品選び

本機の回路はご覧の通りとてもシンプルです。部品選びで気を付けるところは、ダイオードがシリコンではなくてゲルマニウムを使用することと1mAから100μAくらいの感度の良い、見栄えのするメーターを用意するのに苦労するかも知れません。秋葉原のパーツショップを探しましたが、記事で使用されているオリジナルのゲルマニウムダイオードI N34を購入することはできませんでした。
 

本機はIS34で代用しましたが、一番入手しやすいのはI N60かも知れません。メーターは感度が100から200μAのラジケータで代用することもできるでしょう。ケースは金属製を用意して検波ダイオードに直接電波が進入しないように心がけてください。 ダイオードはFCZ研究所の小型の基板でブリッジに組みました。ユニバーサル基板でも、玉子ラグでも組む素材はなんでもかまいません。正しくブリッジに組むことが大切です。
 

フェライトコアの中には1本の電線を通します。フェライトコアを使った工作では電線がコアの中心を通った回数がコイルの巻き数に相当します。2分割のノイズフィルターでは電線を挟むことで1ターンのコールと等価のインダクタンスが発生すると考えられています。
 

本機ではフェライトコアの中を通った1本の電線がワンターンのピックアップコイルとして働きます。使用するノイズフィルターは秋月電子通商で1個150円で求めました。2分割のコアを固定する方法が異なる製品がたくさん市販されています。その中なら電線が挟みやすくて、取り外しが簡単な構造のノイズフィルターを購入してください。コアの減衰特性などの違いは、本機の性能にはあまり関係が無いと思います。
 

本機では手持ちのケースを使用しましたので、フロントパネルにスライドスイッチが取り付けられる穴が開いています。ここにはスイッチを取り付けていますが、配線はしていません。このケースはハムフェアのジャンクショップから入手しました。メーターの穴が開いていてアルミ製の塗装済みケースです。入手したときは通過型電力計を作ろうと思っていましたが、今回の工作に役立ちました。
 

ボリウムは100ΩのA型を使用していますが、B型でもかまいません。多回転タイプのポテンショメーターを使用するほどのことはないと思います。メーターは秋月電子通商のショーケースで1個1,500円の50μAを見つけました。一番やっかいなのは、このメーターの取り付け加工かもしれません。ハンドニブラやドリルが必要になるでしょう。
 

見た目にきれいに仕上げる作業ですから、慎重に行います。メーター端子への配線は直接ハンダ付けするタイプなら、熱を加えないように手早く作業してください。今回採用したメーターはネジで金具を止めるタイプでしたので、あらかじめ配線を作ってから取り付けました。
 

本機は電源を必要としません。RFクランプでピックアップした高周波エネルギーをゲルマニウムダイオードで検波して、メーターを振らせます。ボリウムはメーターの感度を調整しています。

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RFプローブに使用する2分割式のノイズフィルタは,秋月電子通商で求めた150円のパーツ。プラスチックケースの色が黒と白の2色ありますが,どちらでもかまわない。TDKの製品はケーブルをしっかり挟むことができるが,取り外しには不向きなためこのタイプを採用した。ケースには強力な両面接着テープを使って固定している

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●測定したい同軸ケーブルやDCケーブルなどを2分割のフェライトコアで写真のように挟んで測定する。

●同軸ケーブルの外皮に流れるコモンモードノイズや電源ケーブルに漏れる高周波エネルギーを電流計の振れで確認する。

電波障害の調査に使う

本機は各種電波障害の調査に効果を発揮します。まず、TVI などの高周波経路と電源経路の両方から混入経路が考えられる障害では、どちらの経路が障害を起こしている可能性が高いか、配線をクランプするだけで判断することができます。
 

もちろんその後の障害対策の追い込みについても、TV映像による障害の度合いを判断すると同時に、RFクランプのデータからも効果を見ることができます。
 

電話障害では電話線と電源のふたつの経路に対してTVI と同じように調査します。また、トランシーバーを送信中に同軸ケーブルの外皮をクランプしてみると、コモンモードのノイズ電流を見ることができます。さまざまなRF障害の調査やワイヤーアンテナの電流の分布も見ることができます。1台手元にあると便利な測定器になると思います。

参考文献
N5SV Steve L.Sparks 「An RF Current Probe for Amateur Use」
1999年2月号、QST、p.34 ARRL発行

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