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DL Mobile Hotspot の試み

D-STARモービル運用のてん末記

RaspberryPi3のDV-Megaを搭載

★ドイツ連邦共和国ミュンヘン在住の筆者が「モバイルホットスポット」のアイデアを実現した一部始終を綴ると共に、日本の電波法と異なる免許制度に注目してお読みください。

by Kunihiko Iki DF2CW

ことの起こりは

2017年のJAIGグループ*の年次大会がシュバルツバルトで開催され、そのときJAIGグループのメンバーは会場からD-STAR ホットスポットを使って何とかJAとQSOができないものかと試行錯誤を試みました。そのとき、清水さん(DB1JPN)が試験機を持参していたのでインターネットに接続できる簡易セットを設置して、辛うじてJAとQSOができることを確認しました。このとき、要は安定したインターネットへの接続を確実にすれば可能だということがわかりました。
 

*Japanese radio Amateures In Germany JAIGは日独友好の目的で1985年に設立されました。現在、メンバーは500人を超え、ドイツにとどまらず世界各地で活躍しています。

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ホットスポット(左)とICOM ID-31E(EU仕様)トランシーバー

D-StarについてはJAの方式とEUやUSAの方式に差が有りますが、その詳細をここで語るのが目的ではありませんので、EU即ちドイツからJAに接続するためリフレクタDSC022Cを経由して通信することに留めたいと思います。 さて、ここで私のD-STARモービル運用の試行誤策が始まります。

壱岐さんからのメール

QTC-JAPANの「編集長から・・・」のコラムを拝見しました。 そこにはD-STARのモービル運用について書かれていましたので、私が使っているモ-ビル機をご紹介します。まず、私のホットスポットはRaspberryPi3のDV Megaを搭載したものです。
 

それをANKERのブロックバッテリで電源を供給して、通常家に居る時は 家のW-LANに接続されています。ICOM ID-31からこのDV Megaを経由して インターネットに接続する簡単な方式です。 移動運用するときは、家のW-LANの代わりにTP-LINKのM7350を使います。このルータはSIM無しのiPad用に買っておいたものを流用しました。

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先週、JAIGミーティング準備のため Deggendorf に行って来ましたが、その帰り、 日曜日だったので車で移動中にこのモービルセットから JA とメリット5で QSOができて快適でした。この時の運転はエリカ(XYL)でした。昨年のミーティングではリフレクタ(インターネットの仮想レピータ)による通信ができなくて残念な思いでしたが、今回は 会場から JA と交信できます。 段ボール箱はID-31Eのものを流用しました。これにより 大人のおもちゃが増えてXYLは面白いはずがありませんが、私は大変重宝しています。 73 de DF2CW

私はこのD-Star通信を始めるにあたって、地域クラブの先達の意見を聞いてUP4DRA*の完成品を入手しました。*(Universal Platform for Digital Amateur Radio)
 

これはアマチュア用デジタル通信全てに使えるようにとDL(ドイツ)とOE(オーストリア)のハムが一緒になって開発されたものと聞いています。 このセットをONにして、ID-31E 経由で、家で使っているドイツテレコムのルータに接続すると、JAからの素晴らしい音声のコールバックがありびっくりしました。しかし、このUP4は固定での運用に問題ありませんが、私が実現したいのは移動運用とかモービル運用です。
 

そこで思案したのが、まず以前いたずらように買ってあったTP-LINK社のワイヤレストラベルルータAC750(正確にはModel No.TL-WR902AC)を使ってみることでした。7x7x2(cm)くらいのプラスチックケースにクライアントモードがあり、その機能を使うとUP4DARと組み合わせて移動運用ができることがわかりました。

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TP-LINK社のワイヤレストラベルルータAC750(段ボール箱の側面)

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ICOMの段ボール箱に入ったモバイルホットスポットとID-31E

これは私が最終的に希望しているモービル運用には小さな障害があります。といいますのは、それぞれ電源が必要なところです。AC750の方はリチウムバッテリーを使えば良いとしても、UP4の方はDC20Vか220VのACが必要です。

ラズベリーパイにDV-Megaを抱き合わせる

昨年来、若い人たちに遅れをとらないようにRaspberryPiに興味を持っていました。そこでD-STARの大先輩である岡野さん(JF1CXH)に伺うと、そのラズベリーパイにDV-MEGAを抱き合わせるとD-STAR機ができると教えていただき、それらを組み合わせてプログラムをインストールしDV-MEGAでJAとQSOをしています。最初のうちはRaspberryもDV-MEGAもケースに入れておらず不安定でしたが、それらをプラスチックの筐体に組み込み、交信の状態を監視できるディスプレーを取り付けると、安定に動作をするようになりました。

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DV-MEGAの側面

モバイルホットスポットのアイデア

ここで、このDV-MEGA、D-STAR機をモビール運用するにはどうするかを思案しました。 私はSIM無しのiPadmini を外出のときに、ドイツテレコムモのインターネットに接続できるようにと、モービルルータ(プリペイド)を持っています。これもTP-LINK社製で型名はM7350です。
 

そこで「これを使いたい」と岡野さんに相談したところ、プログラム設定でルータのID(名前とパスワード)を追記すると、DV-MEGAがどのルータに接続するかを自動的に選択することを教えて頂き、テストをしましたところ、問題なくリフレクタへのコネクトが可能となりました。 これが現在愛用しているD-STARモービル機です。これらはID-31Eのダンボール箱に収納でき持ち運びは大変楽になりました。

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モバイルホットスポットとID31E

3月中旬、私はJAIGミーティング準備のため今年の会場となるホテルを訪れました。その帰途、車中からこのDVMEAGAを搭載したD-STARモービル局からJAの各局と双方共にメリット5で問題なくQSOができました。これでJAIGミーティング会場からのEU-JA間のQSOの可能性を実視させることになりました。

ドイツではID-31Eの免許でOK

D-STARで使う周波数は、私の場合は1波だけです。それもホットスポットとハンディー機間の交信で、後は全部インターネットが介在してくれています。(ドイツ)電波法上からいえば、70cm帯のハンディー機(ID-31E)の免許があればよいことになります。*[注釈]

[注釈] 本稿での移動運用はドイツ連邦共和国の電波法に基づくDF2CWの運用記をまとめたものです。あくまでもDF2CWの免許による合法的な運用事例として紹介しました。

日本の各総合通信局は「自局アクセスポイントへのアクセス」(1つの局免許で、アクセスポイントを開設し同一局免許で、 そのアクセスポイントにアクセスする場合)は認めていません。従って、一例としてホットスポットは社団局・移動の免許、アクセスする無線機に自局の移動する免許を得て、移動運用が可能となります。また、 ホットスポットのドングルが固定局の送信機として免許された場合、常置場所からドングルを携帯して移動先から運用できないのは電波法の観点から明らかです。

ドイツのアマチュア無線法では、私の調べたところ利用周波数と実効送信電力などを逸脱していなければ何の制限もありません。またD-STARの場合はハンディー機で決まりますので1W程度でしょう。またホットスポットからのレスポンスも10mW程度ですから、これらによる電波障害はほとんどどありませんので心配はありません。また公衆回線(例えばドイツテレコムの)を経由することも許可されています。

動作の手順

スイッチONからDV-MEGAが動作を始めるまでに少し時間がかかります。
最初の内ははて故障かな?と勘違いすることがあります。
 
1)DV-MEGAのスイッチをONにします。RaspberryPiは普通のPCですので立ち上がるまで1分以上時間がかかります。
2)RaspberryPiの表示のLEDに何らかのサインが出たら動作準備となります。
3)ID-31Eのスイッチを入れて周波数を設定してDVモード、表示を CQCQCQ としてDVモードでカーチャンクするとDV-MEGA(RaspberryPi)の表示はDF2CWとなりレスポンスをID-31Eで受信できます。
4)モービルルータのM7350のスイッチをONにします。立ち上がるまで1分くらい掛かります。
5)M7350の準備OKの表示がでたらもう一度ID-31Eを送信状態にすると、DCS022のダッシュボードにDF2CWが表示されて交信準備が全て整います。

最 後 に

デジタル通信の分野でヨチヨチ歩きの私を手取り足とり今日まで育てて下さった岡野さん(JF1CXH)とJAIGメンバーでD-STAR先達のOMの方々に心からお礼を申し上げます。 これを期にD-STARによる国際交流が一層深まることを期待します。

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UP4DARを使用時のモービルセット

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