ホンダ FREED(GB7/FF)
愛車の整備に便利な電動工具
by Takashi Hioki. JF1GUQ / KA8J
2019年12月7日、横浜に初雪が降りました。昨シーズンまでは雪路走行性能に定評のあるスバルForester(4WD/オールシーズンタイヤ装着)に乗っていたので、年に1、2度の降雪時でも問題なく過ごせていましたが、このほどホンダFREED(GB7/FF)に乗り換えたのを機会に、安全性を考えて冬はスタッドレスに履き替えることにしました。FREEDはタイヤチェーン装着時に、タイヤハウスの余裕が少なく、規格が合う製品が限られるというのも、スタッドレスタイヤを導入するきっかけとなりました。
写真1 ホンダFREED標準タイヤの様子。タイヤハウスの余裕がないのでタイヤチェーンを装着するのが困難かつ、製品も限られる
アマチュア無線を楽しむには絶好のロケーションである丘の上に位置する自宅周辺は、どこに行くにも坂道を下らなくてはいけませんし、通常は家内が通勤に使用していますから、そのつどタイヤチェーンを装着するのも無理があり作業が面倒です。 スタッドレスタイヤは近くのオートバックスで特売品(185/65R15、15x5.5Jアルミホイール付き・組み立て工賃込みで4本セット約5万円)を購入し、ホイールごと自宅で入れ替え作業が行えるように、電動工具を揃えました。
タイヤはオートバックスオリジナルブランドで、一説にはダンロップの旧モデルだと言われている商品です。アルミホイールはデザインの異なる2種類から選ぶ方式でした。一つは純正ホイールと同じように黒色塗装とアルミ地金のツートーンタイプで、もう一つが私の選んだ全面塗装タイプのモデルでした。ツートーンタイプはアルミ地金部分をクリア塗装でコートしてありましたが、塩害処理は行われておりませんでしたので、対策済みの本品を購入しました。融雪剤が撒かれた雪路を走行するのですから、同じ価格ならデザイン重視より、塩害対策済みの商品を選ぶ方が懸命です。
入れ替え作業を業者(オートバックスなどの用品店やガソリンスタンドなど)に依頼すると1本700円程度の工賃で行ってもらえるようですが、1シーズンあたり6,000円の出費になることを考えて、2シーズンあたりで元が取れることが分かりましたから、手頃な電動工具を選定して自分で作業を行うことにしました。
購入した電動工具一覧
写真2 電動ジャッキと電源アダプター
ご覧のように電動ジャッキはパンタグラフジャッキに小型のモーターを取り付け、人力で回す部分を電動化している商品です。現在は在庫切れとなって同種の商品では金額が倍近くまで上がってしまいましたが、私は運良く手頃な価格(4,900円)で手に入れることが出来ました。
写真3 Amazonnサイトで取り扱っている電動ジャッキ(性能は私の購入品と同等)
もし、パンタグラフジャッキをお手持ちなら、レバーで回転させる部分(モーターが取り付けられている個所)に取り付けて、インパクトレンチで昇降させる商品もありましたから、それを使っても良いでしょう。
写真4 中国通販サイトで購入した履歴。いろいろ面白い商品を買い集めている
購入先はそれぞれAmazon、中国通販サイトのBanggood、近所のシマホで調達しました。 電動ジャッキとエアーポンプは車載のシガーソケットから給電できるタイプですが、自宅で作業するので、12V10A の電源アダプタを別途用意して、自動車には負担を掛けない方法にしています。おかげでエンジンをかけることなく静かに作業することが出来ました。 また、シガープラグに過大な電流が流れてヒューズが切れることもありませんから、安心です。
別の機会にお話ししようと思いますが、FREEDはヒューズボックスが運転席アクセルペダルの上部にあり、直視することができません。切れた場合の確認作業が困難であろうことが予想できますので、なるべくそう言ったトラブルから逃れたいという気持ちも働きました。 ジャッキアップにおいては自動車の取扱説明書をよく見て、正しい装着位置を確認しておきます。この確認作業が一番重要なポイントです。ジャッキを掛けてはいけない場所に当てるとボディを損傷したり、不安定であったり、その結果不測の事態が起こることがありますので、細心の注意を払ってください。
写真5 出力先が自動車のシガープラグになっている12V10Aの電源アダプター
用意した電源アダプタはスイッチングタイプで軽量です。無線設備に使用するわけではありませんからリップルの大小、電圧降下については問題にしません。商品説明から推測すると精密機械に使用するには向いていないと思われます。
写真6 自動車の取扱説明書を読んで、ジャッキアップできる場所を把握してから作業する
最初に電動インパクトレンチでホイールナットの取り外しを試してみましたが、トルクが足りないようで回りません。
通販サイトの説明では320N・mとなっていますが、この仕様はあてにならないようです。この後、取り付けの時に電動インパクトレンチで締め付けたナットをプリセット型トルクレンチで増し締めすると同時に、トルクを測ってみると80~100N・m程度であると思われました。近くの電動工具専門店を覗いてみると、充電式インパクトレンチの相場は2万円前後でしたから、1/5の価格の製品なので使えるだけ良いことにします。この辺りの諦めが格安電動工具を使用する際には欠かせません。耐久性も劣るようである人は5台買って、次々に使いつぶしたという話も聞こえてきました。
実際の作業ではプリセット型トルクレンチで1/4回転程緩めてからジャッキアップし、ナットの取り外し時にたくさん回転させなくてはいけませんから、そこで電動インパクトレンチを使用して作業効率を高めました。
なお、ホイールナットの取り付けトルクは10?12キロ(100?120N・m)と言われていますから、プリセット型トルクレンチは100N・mにセットしておきます。
写真7 取り外し、取り付けの始めと終りの作業はプリセット型トルクレンチで慎重に行う
トルクレンチはナットの締め過ぎを予防する工具です。100N・mで"カチッ"とノッチがかかりますから、それ以上力任せに締めたり、足で踏んだりしてはいけません。ノッチを無視して締め付ければアルミホイールを損傷させることがあります。 タイヤが接地している状態で、サイドブレーキが引かれていることを確認し、1/4回転程最初に緩めておきます。
上の写真は取り外しの姿勢を写した物です。レンチは必ず引き付ける方法で使用するのが鉄則です。押し付ける方向で作業してはいけません。締める場合は写真とは対照的にソケットに対してレバーは左側になります。 続けて電動ジャッキで車体を持ち上げ、タイヤを地面から浮かせた状態にします。たくさん回さないとナットは外れませんから、その時に電動トルクレンチを使用します。電動ドリルでは代用できませんから気を付けてください。
写真8 充電式トルクレンチでナットを外している様子
ホ―ルナットは19mmのソケットを使用して締め付け、取り外しを行います。写真のソケットはプリセット型トルクレンチに同梱されていました。
写真9 ホンダ純正アルミホイールと一般市販品ではナットの台座形状が異なるため、それぞれ専用のタイプを使用する
写真左が純正アルミホイール用、右が市販用のナット。いずれも盗難防止タイプです。専用のキーで取り外しが出来ます。注意すべきは下側のホイールナット側(台座側)部分です。ホイールの台座形状に合わせてナットが作られていますから、どちらも転用してはいけません。そのため形状の異なるナットが2種類(5本×4セット)を用意しました。 もちろん、スタッドレスタイヤにもホンダ純正のアルミホイールを使用すれば、このような心配は不要ですが、価格が予算オーバーとなります。
取り外した通常タイヤのホイールには、それがどの位置に取り付けてあったかを示す表示を用意します。FF車の場合は特に前輪の摩耗が早いので前後のタイヤを入れ替える(タイヤローテーション)作業が必要になります。今回のように冬用タイヤに取り換えるタイミングでローテーションさせれば無駄がありません。半年後、元のタイヤに入れ替える場合、この表示が役に立ちます。一般的には左右のタイヤを入れ替えることをしないのが、今の流儀です。左右でタイヤを交換してしまうと、回転方向が逆向きになるので、それが嫌われています。タイヤによっては回転方向が指定されているものもありますから、その点も注意してください。
写真10 取り付けられていた場所を示す表示
自動車の左右と言うのは運転席に座った状態で見ることに決まっています。ボンネットを正面して見ると左右は逆になりますから、必ず運転席から見た状態で判断します。
写真11 リアアクスルが露出した状態
話が少し外れますがFREEDはHV(ハイブリッド:GB7)の場合、リアブレーキにもディスク型が採用されています。リアアクスルは左右が連結された一体型形状で、トーションバー(ねじりばね)を構成しています。この形は小型乗用車のお手本となったVWゴルフに似ています。ロール時に粘りがあるのと、突き上げ時にはマイルドなショックで乗り心地が良いのが特長です。
スタッドレスタイヤのトレッドには細かい溝が切ってあります。その溝で雪・氷が溶けた水を掴んでグリップを得る構造です。ゴム質も柔らかく、低温でも固くなりませんが、気温が高い時期に使用するとノーマルタイヤに比べて制動距離が長くなる傾向がありますから、冬季に限定して使用します。
写真12 ナットの取り付けはある程度まで手作業で行う(最初から電動工具を使ってはいけない)
最初から電動工具で締め付けようとすると、ネジ山を壊す恐れがありますから、軽く台座に当たるまでは、手作業でナットを締めておきます。作業時には滑り止めが付いた作業用グローブを使用して、手を保護します。
写真13 仕上げに空気圧を確認して調整する
スタッドレスタイヤは購入時に空気圧が2キロに設定されていましたので、それをFREEDの規定圧(前輪:2.4キロ、後輪:2.2キロ)に調整します。Banggoodから入手した小型のエアーポンプ(1,313円)は圧力計が付いていますから、測定しながら調整できました。 空気圧の表示は、ポンプ動作前に2キロを示していましたから、たぶん正確なんでしょう。安価な割に良くできた商品です。 空気圧の規定値は運転席側のドアのどこかにその表示がありますから、それを参考にしてください。
写真14 ウインドウォッシャー液の濃度を高めるために、一旦タンクの中をできる限り減らす
これは余分な話ですが、凍結予防のためにウインドウォッシャー液も交換しました。新車納入時に入っていた液体はポンプで出来る限り吸い出し、撥水型ウインドウォッシャー液・ガラコに入れ替えました。
写真14 撥水型ウインドウォッシャー液・ガラコを薄めずに使用する
ラジエーターには不凍液が入っていますから、それはよほどの寒冷地に行かない限り交換の必要はありませんが、見落としがちなのはウインドウォッシャー液の濃度です。これが低いとタンクの中で凍ってしまいます。季節によって濃度を調整するのは面倒ですから、撥水型のガラコを原液で使用するようにしていますので、併せて作業しました。
もちろん、納車即シリコン配合の「超ガラコ」を施術して置いたのは言うまでもありません。できる範囲で愛車のメインテナンスを楽しんでみました。 なお、作業においては安全に気を配り、自己責任でお願いします。自信が無い場合、経験が無い場合は専門業者に依頼することをお勧めします。参考になれば幸いです。