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国境の島運用記(2)

「ツール・ド・対馬」国境の島運用記

対馬九州最北端。本土から132km、韓国までわずかに49.5キロメートルの国境の島へ遠征しました。

Takashi Hioki , JF1GUQ 
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▼北緯34度、東経129度、国境の島
 

対馬は九州最北端。本土から132km、韓国までわずかに49.5kmという国境の島。

二つの海流に洗われた海岸線は、山が迫り急な斜面になって落ち込んだ磯の浜。天然の良港が多く、四季を通して豊かな漁場に恵まれている。島の約89パーセントを占める山間部には、緑深い照葉樹林や清らかな渓流が残され、大陸系の珍しい動植物が生息。

今回参加の6局とJA1ZNG(QTC-Japanハムクラブ)のQSLカードが完成しました。 対馬全島の地図、天然記念物”ツシマヤマネコ飛び出し注意”の交通標識、バーチカル・アンテナを背景に対馬を訪問の5人+JA6VAG小田さんを撮影、これらをデザインしました。撮影JF1GUQ

■それは、超割チケットから始まった

国内航空会社各社は、ある期間を設けて格安のチケットを販売しています。帰省や旅行にと、とても人気の高い商品のようです。私たちの対馬行きも、この格安チケット の話から始まりました。 QTC-Japanは気心の知れている仲間が集まって不定期にワイワイ、ガヤガヤ楽しんで い るクラブです。あるとき、この格安チケットが話題に上って、どこかに移動運用に出 かけようと言う話がまとまりました。
 

実は、昨年はJA1AYC松本さんの世界、国内 両読売一万局アワードの申請をお手伝いするために、三々五々おなじ顔ぶれで集まっ たのですが、その時、データを整理していた人が、これならWAJA、WAGAアワードも取得できそうだと言うことになりました。

そこでデータを並び替えたところ、長崎県上県郡(かみあがたぐん)が未交信 になっていることに気が付き、JH1VVW、JF1GUQの二人が格安チケットで対馬に出かけて、 この長崎県上県郡をサービスしたという経緯があります。

今年の計画ではいろいろな候補地が挙がったのですが、昨年の良い思いを今年はみん なで共有したいという気運が高まり、2年連続で 対馬に向かうことにしました。

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■ツール・ド・対馬・・・移動運用とバーベキュー、島内観光を満喫

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(左)バーベキューに興じる左からJH1VVW、JA1CVF、JA6VAG 小田さん。サザエのつぼ焼きは美味でした   (右) JI1FOL/6 矢田さん7と10メガのCWを担当。10メガではパイルアップを受けてご機嫌でした。

対馬の下県郡美津島町(しもあがたぐん・みつしまちょう)にはSSTVにアクティブなJA6VAG小田さんがおられます。昨年も大変お世話になったのですが、今年も輪を掛けてお力添えをいただきました。 メンバーのJI1FOL 矢田さんは小田さんとは昵懇の間柄です。伺ったところによりますと矢田さんは5歳まで対馬の木坂地区に住んでいたと言うことです。お父上が神主さんで海神神社に赴任したことにそのルーツがあるのですが、矢田さん5歳の時(65年前)にお父上がその地で亡くなり、そういった意味でも忘れることができない場所だったようです。

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(左)JH1VVW 石井さん、棒切れを即席の釣竿に仕立ててカサゴを釣り上げました。白水旅館の目前でこの釣果!   
(右) 木坂の海神神社。海の守護神豊玉姫命を祀る、かつての対馬一の宮。宝物殿には新羅仏などを収蔵

そのため、数年前に矢田さんは単身対馬に向かい、小田さんとお会いしていたということで、昨年の対馬行きにもご協力頂きました。今年はメンバーとして電波を出すことになりました。 今回の矢田さんの参加でCWオペレーターを確保することに成功しました。

JA1FUY 川合さん、JA1CVF 岡田さんはもう少しで50年を数える友人関係です。そのお二人が対馬でおいしい魚が食べられること、小田さんとはしょっちゅうQSOしていることなど、残る二人は昨年も参加したJH1VVW、JF1GUQ。 今年はサザエの壺焼きのふたをいかに上手くこじ開けるか…など、なんだかよく分からない動機で目的地に向かいました。 そして、このプロジェクト(と言えるかどうか)を『ツール・ド・対馬』と名付け ました。

■21MHz帯 5/8λグラウンド・プレーン(GP)アンテナ

移動運用では、普段自宅では楽しめないアンテナ工作が(苦痛でもあり !?)楽しみでもあります。今回の秘密兵器は長さ10mのグラスファイバー製ポール。まるで釣り竿のようですが、米国のMFJ から販売されているアマチュア無線用のグッズ(MFJ-1910、33フィート、US$79.95)で、これを ベ ランダから突き出してローバンドにオンエアする人も多いとか。
 

運用場所に選んだ上県郡峰町(かみあがたぐん・みねちょう)の白水旅館(しろず・りょかん)は船着き場に建つ料理のおいしい旅館です。昨年もお借りした鯉のぼりを上げるためのロープを使い7MHzのダイ ポール・アンテナを建設しました。 港に向かって開けた土地にそのMFJ のグラスファイバー製ポールを建て、根元にICOMのオート・アンテナチューナー AH-4を装着。 ポールに沿って電線をはわせ、それをエレメントにすることで7MHz帯の1/4λ GP、あわよくば21MHz帯の3/4(5/8)λGPとして働いてくれることを期待しました。

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(左)SSTVを運用するJA1FUY/6   ICOM IC-706MKⅡGM、10mバーチカルアンテナ+アンテナチューナーAH-4、ノートパソコン(NEC Lavie)+MMSSTV    
(右)JF1GUQ/6日置さんは、7MHz SSBをオペレートしました。長崎県上県郡峰町はなかなかの人気で呼ばれ続けてご機嫌でした。IC-706MKⅡGM+AT-180

■隣は韓国、釜山まで49.5キロの距離、日本より断然近い!

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(左)韓国の釜山まで49.5キロの距離にある。右上の島は航空自衛隊のレーダー基地(第19警戒群)です。    (右)韓国風の韓国展望所。天気がよければ肉眼でも釜山が見え、備えつけの望遠鏡なら街並みがはっきり映る

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(左)厳原町(いずはら)の”朝鮮国通信使之碑”。周辺に対馬観光物産協会、対馬歴史民族資料館などがある    
(右)455mの偉容を誇ったオメガ鉄塔はモニュメントを残してひっそり。上県郡上対馬町に残る記念公園の様子

対馬の位置関係は、九州本土まで130km以上離れているのに対して、韓国とは肉眼で見える距離にまで近い関係にあります。文化、風土もどことなく異国を感じさせる風情です。

詳しくは観光ガイド、インターネットの検索エンジンに譲りますが、QSLカードの絵柄となった≪ツシマヤマネコ飛び出し注意!!≫の看板など、旅行気分を高めてくれます。 東京からは羽田空港から福岡を目指し、飛行機を乗り換えて対馬に行くことができます。
 

今回先発隊のJA1CVF、JI1FOL、JA1FUYはこのルートで現地入り。 後発隊のJH1VVW、JF1GUQは同じルートを取ったのですが、天候不良によ り福岡に舞い戻ってしまいました。そのため、ジェットホイールに乗り換えて海路、 対馬に向かったわけですが、これはこれで快適でした。

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島内の移動手段はレンタカーを使用。SSTVの送信画用にデジカメで名所旧跡の撮影を行い、存分に対馬を楽しむことができました。 まだまだ言い足りないことだらけですが、どうぞご興味を持たれた方は次の格安航空 券の獲得時期に移動運用をプランニングされてはいかがでしょう。IOTAサービスや来年3月に予定されている町村合併(対馬市)までに駆け込みでサービスを行うなど、パイ ルアップを体験できる要素がまだまだ残されています。 (終わり)

■矢田さんの活躍で移動運用の面目を保ち 302 QSO !

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▼対馬滞在日とコールサイン
 
3月10日~13日:JA1CVF JI1FOL JA1FUY 
3月11日~13日:JF1GUQ JH1VVW
JA6VAG(特別参加)

QSLカード:JARL QSLビューローへ発送済み。
* NVCG SSTV コンテストに参加

■ご参考

白水旅館(しろず・りょかん):収容人員15名 1泊2食約5千円
長崎県上県郡峰町佐賀537 ℡:0920-82-0006
レンタカー 空港インレンタカー ℡:09205-4-3329
ジャパレン長崎 ℡:09205-4-2220

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「壱岐・対馬の道」 新書判
司馬遼太郎著 街道をゆく

壱岐・対馬の歴史的な存在は、古代における輸入鉄の海上輸送の経路に浮かんでくるということで、神話や伝承の上での不可思議な相貌を帯びているのである。もし鉄という媒介がなかったら朝鮮から日本への人間が移動するということもすくなかったであろう。(本文より)
 

朝日新聞社 定価460円  244頁

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自動撮影装置で撮影のツシマヤマネコ(対馬野生生物保護センターより)

QTC-JAPAN.COM 2003.05.01

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